パティシエという職業に憧れを抱く方は多いものの、実際の現場では華やかなイメージとは異なる現実があります。
確かにパティシエの仕事は大変な面が多いのが現状ですが、それでも続ける理由があるのもまた事実。
この記事では、パティシエの仕事で直面する具体的な困難から、それらを乗り越える方法まで詳しく解説します。
現在パティシエとして働いている方や、これから目指そうと考えている方にとって、リアルな情報と具体的なアドバイスをお届けします。
パティシエの仕事で大変なこと

パティシエの仕事は見た目の華やかさとは裏腹に、実際には過酷な側面も多く、続けていくなかで多くの困難に直面します。
パティシエが直面する主な困難には、以下のようなものがあります。
- 一人前になるまでに時間がかかる
- イベント時期と繁忙期が重なり予定が立てにくい
- 常に独創的なデザートを作るためのアイデア探しに追われる
- 体力的な負担が大きい
- 怪我や火傷のリスクが高い
- 甘いもの中心の食生活による体調管理の難しさ
- 自己負担での練習コストがかかる
- コンクールへのプレッシャー
- 人間関係や上下関係のストレス
- 高い離職率と報われにくい待遇
一人前になるまでに時間がかかる
修行にかなり時間がかかり、その間に辞める人はかなり多いのがパティシエの世界です。
製菓学校を出て修行に行く人が多いのですが、一人前になってケーキ作りなどを任せてもらえるまでに10年近くかかるケースもあります。
この長期間の修行期間中は、主に雑用や基本的な作業が中心となり、思い描いていた華やかな仕事からは程遠い現実に直面します。根気と忍耐力が何より必要とされる期間といえるでしょう。
もちろん職場によっては、数年でケーキなどを担当できる職場もあるので、最初の職場探しが重要になってきます。
イベント時期と繁忙期が重なり予定が立てにくい
バレンタインデー、ホワイトデー、ハロウィン、クリスマスなど繁忙期になる(10〜3月の約半年間)ため、この期間は本当に忙しくなります。
デートや友達と遊ぶ予定などは入れられないほど忙しくなり、そのためプライベートの予定が立てられなくなることも少なくありません。
特にカップルや友人関係に影響を与えることも多く、人生設計を考えるうえで大きな課題となります。
常に独創的なデザートを作るためのアイデア探しに追われる
パティシエは初めは人の模倣でも良いのですが、自分だけのデザートを作り出さないと、有名なパティシエになることはできません。コンクールなどに出るにも、自分だけのアイデアが必要です。
YouTuberでパティシエがケーキ作りを発信している事例もありますが、バズるのはやはりオリジナリティがあるパティシエです。
仕事をしながらだと職場で基本的な技術を学びつつ、自分のプライベートで勉強をしてオリジナリティを磨いていく必要があります。
常にデザートのことを考えているような状態になり、オンオフがつけられなくなるケースも少なくありません。
体力的な負担が大きい
パティシエは体力的負担が大きく、肉体的にとても大変な職業です。
まず朝が早く、繁忙期には残業が発生します。さらに長時間労働の間はずっと立ちっぱなしで、同じ姿勢でいることが多いので、腰や肩を痛めてしまう人も多くいます。
重い材料・道具の運搬、大量の洗い物や仕込み作業もあり、体力を消耗する作業が続きます。年齢を重ねるにつれて、この体力的な負担はより深刻な問題となってきます。

怪我や火傷のリスクが高い
鋭いナイフや熱された鉄板の使用、ミキサーなど意外と危険なものを扱う機会が多く、怪我や火傷をしてしまうことは決して少なくありません。
万が一怪我や火傷をすれば労災が認められますが、怪我で仕事ができなくなることもあるので、細心の注意が必要です。
特に疲労が溜まっている時や急いでいる時ほど、このようなリスクが高まる傾向にあります。
甘いもの中心の食生活による体調管理の難しさ
パティシエとしての技術を磨くには自主練が必要ですが、その際作ったお菓子は自分で味見、残りを周囲に配る必要があります。
周りに友達や家族がいればある程度消費できますが、そうでないと自分で消費するしかなく、栄養バランスが崩れがちになります。
特にケーキなど日持ちがしないものは早めに食べることになり、食事をケーキで済ませた結果、貧血や栄養失調気味で体調を崩すケースがあります。健康管理も仕事の一部として意識する必要があるでしょう。
自己負担での練習コストがかかる
パティシエで上を目指すためには自主練が必要ですが、そのコストが高いのも問題です。製菓の材料は案外高く、例えば、フルーツタルトの材料費の例では、一つのタルトで約1,840円の材料費がかかり、原価率は約38%となっています。
材料のなかでも、クーベルチュールチョコレートやスペイン産の高品質アーモンドプードル(マルコナッシュ)などは特に高価です。また、マカロンのような繊細な洋菓子では、良質な材料を多量に使うため、材料費がさらに高くなります。
自主練の場合大量仕入れできるわけではないので、割引もなく、費用がかかるのが現実です。
コンクールへのプレッシャー
パティシエとして上を目指すためにはコンクールへの出場、受賞経験が必要です。
コンクールで勝つためのアイデア作り、練習、実際のコンクールでのプレッシャーなどで、仕事以外でも常にお菓子と向き合うため精神的に疲れることがあります。
その結果勝てれば良いのですが、コンクールは皆が本気で挑んでくるため絶対勝てるともいえず、負けて落ち込むことも少なくありません。
人間関係や上下関係のストレス
パティシエは華やかなイメージですが、料理人つまり職人の世界です。
そのため上下関係にかなり厳しく、また「技術を目で、実践で覚えろ」という風潮があります。
普通の仕事のようにマニュアル化されているわけではないため、周りにわからないことを聞きにくかったり、研修環境が一般の仕事のように充実していません。
忙しい職場だと皆イライラしており、厳しい叱責を受けることもあります。
高い離職率と報われにくい待遇
パティシエは5年で90%が離職するといわれる厳しい業界です。その背景には年収が低い(300〜400万円)、さらに厳しい労働環境やキャリアパスが明確でないため報われにくいといわれています。
ただしこれは一概にはいえず、パティシエインフルエンサーには「専門卒後すぐに年収400万円以上のお店に就職し、その職場ではケーキ作りを任せてもらえてやりがいもある」と言っている人もいます。

大変なことばかりじゃない!パティシエがやりがいを感じる瞬間

パティシエの仕事には確かに大変な面が多いですが、だからこそ感じられる喜びや達成感も大きいものです。多
くのパティシエが「この瞬間のために頑張れる」と語るやりがいの瞬間をご紹介します。
どれも苦労を乗り越えてこそ味わえる、パティシエならではの特別な喜びといえるでしょう。
- 自分の作品でお客さんが喜んでいる顔を見たとき
- 理想の世界観をデザートに落とし込めたとき
- 自分の作品やアイデアが商品化されたとき
- コンクールで受賞を果たしたとき
- お菓子作りをSNSなどで発信して褒められたとき
- 自分のお店を持てたとき
自分の作品でお客さんが喜んでいる顔を見たとき
お客さんの笑顔こそが、パティシエにとって最大の喜びです。
自分が心を込めて作ったケーキやお菓子を食べて、「美味しい!」と嬉しそうな表情を見せてくれる瞬間は何にも代えがたいものです。
特に記念日や特別な日のために作ったケーキで感動してもらえたときは、夜遅くまでの作業や体力的な負担も報われたと感じるパティシエが多いのです。
一つ一つの笑顔が次の創作への原動力となり、この喜びがパティシエを続ける大きな理由になっています。
理想の世界観をデザートに落とし込めたとき
パティシエは単なる職人ではなく、アーティストとしての側面も持っています。自分が頭の中で描いていた理想のイメージを、デザートとして完璧に表現できたときの喜びは格別です。
素材の組み合わせ、色彩、形、食感、香り、味わいなど、あらゆる要素が調和した作品を生み出せたときは、創造者としての満足感で胸がいっぱいになります。
特に季節感を表現したデザートやテーマに沿った世界観を持つ作品が完成したときは、技術者としてもクリエイターとしても大きな達成感を得られます。
自分の作品やアイデアが商品化されたとき
自分が考案したレシピやアイデアが実際に店舗で販売されるようになったときは、強い達成感と誇りを感じます。試作を何度も繰り返し、改良を重ねてきた商品が店頭に並ぶ瞬間は特別です。
お店のメニューに自分の名前が載ることや、定番商品として長く愛されることは、パティシエとしての存在価値を実感できる出来事です。
また、自分のアイデアが多くの人に届けられ、店の売上に貢献していることを知ると、プロフェッショナルとしての自信につながります。
コンクールで受賞を果たしたとき
プレッシャーの大きいコンクールですが、受賞できたときの喜びはひとしおです。同業者からの評価を得られることで、自分の技術力やセンスが認められたという確信を持てます。
数か月にわたる準備期間、何度もの試作、本番での緊張など、あらゆる困難を乗り越えて勝ち取った栄誉は、何物にも代えがたい達成感をもたらします。
受賞によって業界内での知名度が上がることで、キャリアアップにもつながることが多く、次のステップへの大きなモチベーションになります。
お菓子作りをSNSなどで発信して褒められたとき
現代では、SNSを通じて自分の作品を発信できるようになりました。インスタグラムやユーチューブなどで作品や技術を公開し、「いいね」やコメントがたくさんつくと、直接お客さんとつながれているような感覚を得られます。
特に自分のお店では提供できないような実験的な作品も発信できるため、創作意欲が刺激されることも魅力です。
同業者からの専門的な評価や質問を受けることで、自分の技術や知識を再確認し、さらに磨くきっかけにもなります。SNSでの活動が新たな仕事にもつながるのです。
自分のお店を持てたとき
多くのパティシエの最終目標である独立開業を果たしたときの喜びは格別です。これまでの苦労と努力が実を結び、自分の理想とするお店を実現できる瞬間は、パティシエ人生の集大成といえるでしょう。
自分の名前を冠したお店、自分だけのこだわりを詰め込んだ空間、そして自由に創作できる環境を手に入れることは、大きな達成感をもたらします。
徐々に常連客が増え、地域に根付いていく実感を得られたときの喜びは何物にも代えがたく、多くの人に幸せを届けられることが最大のやりがいとなります。
パティシエの大変なことに直面している方へのアドバイス

現在パティシエとしての困難に直面している方に向けて、実践的なアドバイスをお伝えします。大変な状況を乗り越えるための具体的な方法を知ることで、より良い職業生活を送れるはずです。
パティシエの困難を乗り越えるための主な方法には、以下のようなものがあります。
- スキルアップと専門性を磨く
- 効率的な自己投資を考える
- 労働環境について職場と相談してみる
- 働く場所を変えてみる
- パティシエの能力を活かせる別の仕事を検討する
スキルアップと専門性を磨く
技術力を向上させることで、より良い条件の職場に転職できる可能性が高まります。特に、特定分野(チョコレート、糖細工、和菓子など)に特化することで、専門性の高いパティシエとして価値を高めることができます。
また、マネジメント能力や外国語スキルを身につけることで、キャリアの幅を広げることも可能です。現在の厳しい環境を、将来への投資期間と捉える視点も重要でしょう。
効率的な自己投資を考える
練習コストを抑えるために、材料費を節約できる方法を検討してみましょう。
例えば、同じ目標を持つ仲間とグループを作り、材料を共同購入することで単価を下げることができます。
また、オンラインでの学習機会を活用することで、移動時間や費用を削減しながらスキルアップできます。効率的な自己投資により、負担を軽減しながら成長を続けられるはずです。
労働環境について職場と相談してみる
小さなお店だと相談しにくいかもしれませんが、大手の場合は相談によって状況が改善する場合があります。特に人間関係の悩みなどは、近年のパワハラなどへの対応を重く見ているところもあり、対応を変えてくれる可能性があります。
また労働環境についても、労働時間をフレックスにしてもらえたり、定時で帰る日を1日でも作ってもらえるなどの対応をしてもらえるかもしれません。今の職場を離れたいわけでないなら、一度相談してみる価値はあります。
具体的な交渉術としては、以下の点を意識しましょう。まず現状を客観的にデータで示すこと(労働時間の記録など)、改善案を具体的に提示すること、会社にとってのメリットも含めて提案することが重要です。
例えば「効率的な作業により品質向上が期待できる」といった観点で話し合ってみましょう。
働く場所を変えてみる
パティシエは待遇が悪いといわれがちですが、実は働くお店によって待遇はかなり違うといわれています。
個人店のパティシエの場合、給料低めで労働時間が長い傾向にありますが、ケーキ作りを早く任せてもらえる、何でもやらせてもらえるというメリットがあります。
大手のケーキ店のパティシエは、給料は比較的良く、スタッフが多いので労働時間も割と規則的です。ただし分業が進んでいるので、1つの作業を淡々とこなすことが多いかもしれません。
大手ホテルでは、レベルの高いパティシエに師事できる可能性があり、大手や外資は比較的給与も良いとされています。ただし、分業なので思った仕事ができるとは限りません。
結婚式場は比較的労働環境は良いのですが、作れるケーキの種類が限られる(ブライダルによる)という特徴があります。
環境、また企業によっても待遇は違うので、自分が大変だと思う部分をカバーできる職場を探して転職を考えてみましょう。その際は飲食に強いエージェントの活用が必須です。

パティシエの能力を活かせる別の仕事を検討する
パティシエの技術や知識を活かせる他の職業への転換も一つの選択肢です。
例えば、製菓学校の講師(給料は安定しており労働時間も決まっている、繁忙期とかもあまりない)、SNSで製菓について発信してパティシエ系のインフルエンサーになる、料理教室の先生などがあります。
例えばコンビニに入社してお菓子を開発するなど大手企業の開発部門への転職も、選択肢の1つとして考えられます。パティシエとしての経験を活かしながら、より良い労働条件を得られる職業を選択してみましょう。
パティシエの大変さに関するよくある質問
パティシエの仕事について悩みや疑問を抱えている方に向けて、よくある質問をまとめました。
これらの質問への回答を通じて、パティシエとしての今後の方向性を考える参考にしていただければと思います。
以下では、パティシエが直面しやすい代表的な疑問について詳しく解説していきます。
- パティシエを辞めたいと思うのは甘えですか?
- パティシエに向いていない人の特徴はありますか?
- パティシエから他業種への転職は難しいですか?
- パティシエを辞めたいと思うのは甘えですか?
-
パティシエを辞めたいと考えることは決して甘えではありません。
この業界は5年で90%の人が離職するといわれており、多くの人が同じ悩みを抱えている現実があります。
長時間労働や体力的な負担、待遇面での厳しさなど、客観的に見ても過酷な環境で働いているのです。重要なのは、辞めたい理由を明確にすることでしょう。
自分の気持ちに正直になり、将来を考えた判断であれば、それは決して逃げではありません。 - パティシエに向いていない人の特徴はありますか?
-
パティシエに向いていない人には、いくつかの共通した特徴があります。
まず体力的な負担に耐えられない人は厳しいといえるでしょう。長時間の立ち仕事や重い材料の運搬が日常的にあるためです。
また細かい作業が苦手な人も適性が低いかもしれません。ケーキのデコレーションや精密な計量など、繊細な技術が求められます。ただし、努力次第で改善できる部分も多いのです。
- パティシエから他業種への転職は難しいですか?
-
パティシエから他業種への転職は、思っているほど難しくありません。
製菓技術や食品に関する知識は、様々な分野で活かせるスキルだからです。食品メーカーでの商品開発職や品質管理職では、パティシエの経験が高く評価されます。
また製菓学校の講師や料理教室の先生として、技術を教える仕事も選択肢の一つです。
転職活動では、専門性、創造力、責任感など、パティシエ時代に培ったスキルを適切に伝えることが成功の鍵となります。
まとめ
パティシエの仕事は確かに大変な面が多く、長時間労働や体力的負担、経済的な厳しさなど、さまざまな困難があることは事実です。一人前になるまでの長い修行期間や、コンクールへのプレッシャー、高い離職率などの課題もあります。
しかし、その分お客様の笑顔や自分の創造性を表現できる喜び、技術的な成長を実感できる瞬間など、他の職業では得られない特別なやりがいもあります。
工夫次第で労働環境を改善したり、自分に合った職場を見つけたりすることで、より充実したパティシエ生活を送ることは十分可能です。
現在困難に直面している方も、適切な対策やキャリアプランを立てることで、状況を好転させられるはずです。パティシエとしての技術を活かせる別の道もありますので、自分にとって最適な選択肢を見つけていくことが大切でしょう。
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