管理栄養士としての就職先を考える際、多くの方が病院や介護施設を思い浮かべるでしょう。
しかし、近年は食品メーカーに就職する管理栄養士が増えており、専門知識を活かせる新たな職場として注目を集めています。
本記事では、食品メーカーにおける管理栄養士の具体的な仕事内容や向いている人の特徴、実際に活躍している企業事例、就職に必要なスキルについて詳しく解説します。
「食品メーカーってアリなのかな?」と悩んでいる管理栄養士の方にとって、キャリア選択の判断材料となる情報をお届けします。
食品メーカーが管理栄養士を採用する理由

食品メーカーが管理栄養士を積極的に採用する背景には、消費者の健康意識の変化があります。
現代の消費者は単に美味しい食品を求めるだけでなく、栄養価や健康への影響を重視して商品を選ぶようになっています。
また、食品の安全性や表示の正確性に対する社会的な関心も高まっています。
食品表示法の改正により、科学的根拠に基づいた正確な栄養表示が求められるようになりました。
この要求に応えるためには、栄養学の専門知識をもつ管理栄養士の存在が不可欠です。
さらに、医療機関や介護施設への営業活動では、管理栄養士の資格をもつスタッフが同行することで、専門的な質問に的確に答えることができ、顧客からの信頼獲得につながります。
このように、管理栄養士は食品メーカーにとって競争力向上のための戦略的な人材として位置づけられています。
食品メーカーで管理栄養士が担う仕事内容とは

食品メーカーにおける管理栄養士の業務は多岐にわたります。
従来の給食管理や栄養指導とは異なる専門性が求められる一方で、企業活動の一環として収益性や効率性も重視されます。
- 商品開発・栄養設計
- 品質管理・表示チェック業務
- 研究・データ分析業務
- 営業や販促支援
食品メーカーにおける管理栄養士の業務は多岐にわたります。食品メーカー全体の職種について詳しく知りたい方は「食品メーカーの職種は?業態の特徴と仕事内容を徹底解説」もご覧ください。
商品開発・栄養設計
商品開発・栄養設計は、食品メーカーで働く管理栄養士の最も中核的な業務のひとつです。
特に高齢者食や育児食、機能性食品などの分野では、栄養バランスの設計やレシピ構築において管理栄養士の専門知識が不可欠となります。
この業務では、ターゲットとなる消費者の栄養ニーズを分析し、それに応じた最適な栄養設計をおこないます。
例えば、高齢者向けの食品では、咀嚼や嚥下の機能低下を考慮しながら、必要な栄養素を効率的に摂取できる商品設計が求められます。
また、機能性表示食品の開発では、特定の栄養成分の含有量や機能性について科学的根拠に基づいた設計をおこないます。

品質管理・表示チェック業務
品質管理・表示チェック業務は、食品の安全性と法令遵守を確保する重要な業務です。
管理栄養士は、食品表示法やJAS法に基づいた正確な栄養表示の作成と検証を担当します。
具体的には、製品の栄養成分分析結果を基に栄養成分表示の内容を確認し、表示値と実測値の乖離がないかをチェックします。
また、アレルゲン表記の管理では、原材料の由来や製造工程での混入リスクを評価し、適切な注意喚起表示をおこないます。
これらの業務は法的責任を伴うため、栄養学の知識だけでなく食品関連法規への深い理解が求められます。
研究・データ分析業務
研究・データ分析業務では、科学的根拠に基づいた商品開発をサポートする重要な役割を担います。
栄養調査やモニター試験の結果分析、成分データの収集と活用など、データサイエンスの要素も含む高度な業務です。
栄養調査では、ターゲット層の食事摂取状況や栄養課題を分析し、新商品開発の方向性を決定するための基礎データを提供します。
また、学会発表や論文作成を通じて、自社の研究成果を外部に発信する機会もあり、研究者としてのキャリアも積むことができます。
営業や販促支援
営業や販促支援では、管理栄養士の専門知識を活かして顧客への技術的サポートを提供します。
特に医療機関や介護施設、学校給食などの専門性の高い顧客に対しては、管理栄養士による対応が強く求められます。
得意先での商品説明では、栄養成分の特徴や健康への効果について科学的根拠を示しながら説明し、顧客の信頼を獲得します。
食品メーカーに向いている管理栄養士の特徴

食品メーカーで成功する管理栄養士には、従来の医療・福祉分野とは異なる特徴的な資質が求められます。
企業環境での活躍に必要な能力や思考パターンを理解することで、自分の適性を判断できるでしょう。
- 栄養価と商品性を両立させる発想力がある
- 食品表示法・JAS法への専門的理解力が高い
- BtoC市場での栄養訴求センスに長けている
栄養価と商品性を両立させる発想力がある
食品メーカーで最も重要な能力のひとつが、栄養価と商品性を両立させる発想力です。
病院食では治療効果が最優先されますが、食品メーカーでは「売れる美味しさ」と「栄養価」の両方を満たす商品設計が求められます。
この能力は、栄養学の知識だけでなく、消費者の嗜好や市場トレンドへの理解も必要とします。
また、コスト制約の中で最適な栄養設計をおこなう能力も重要で、商品価格と栄養価のバランスを考慮した現実的な提案ができる管理栄養士が求められています。
食品表示法・JAS法への専門的理解力が高い
食品メーカーでは、食品製造業特有の法規制への対応が必要です。
食品表示法やJAS法、健康増進法など、複雑な法的要件を正確に理解し、実務に適用できる能力が不可欠です。
特に機能性表示食品の分野では、消費者庁の定める厳格なガイドラインに従った表示作成が求められます。
BtoC市場での栄養訴求センスに長けている
食品メーカーの顧客は一般消費者です。そのため、専門的な栄養情報を分かりやすく魅力的に伝える能力が求められます。
医学的な正確性を保ちながらも、消費者が理解しやすい表現で栄養価値を訴求するセンスが必要です。
このような消費者目線での情報発信ができる管理栄養士は、マーケティング部門からも高く評価されます。
管理栄養士が活躍できる食品メーカーの実例紹介

実際に管理栄養士が活躍している食品メーカーの事例を通じて、具体的な業務内容や待遇について理解を深めましょう。
食品メーカー全体の年収事情については「食品メーカーの年収は高い?平均・企業別・職種別のデータを徹底解説!」で詳しく解説しています。
- 大塚食品(メディカルフーズ部門)
- 森永乳業(研究・厨房部門)
- 森永乳業クリニコ(病態・介護食)
- キユーピー(ベビーフード・調味料)
- 日清オイリオ(高齢者・機能性食品)
- アサヒグループ食品(サプリ・食育支援)
大塚食品(メディカルフーズ部門)
大塚食品のメディカルフーズ部門では、医療・介護現場向けの栄養食品の開発に管理栄養士が深く関与しています。
同社では管理栄養士の資格は必須条件ではありませんが、実際には多くの有資格者が活躍しており、専門知識を活かした商品開発がおこなわれています。
具体的な業務内容としては、嚥下困難者向けの食品開発や、特定の疾患に対応した栄養設計などがあります。
医療機関との連携も密接で、現場のニーズを直接商品に反映させることができる環境が整っています。
年収は400万円から700万円程度で、医療分野での経験を企業での商品開発に活かせる魅力的な職場です。
森永乳業(研究・厨房部門)
森永乳業では、研究企画部門を中心に管理栄養士の積極的な採用をおこなっています。
同社の強みである乳製品を基盤とした機能性食品の研究開発において、栄養学の専門知識をもつ人材が重要な役割を担っています。
業務内容は、新商品の栄養設計から臨床試験の企画・実施、学術的なエビデンス構築まで幅広くカバーしています。
また、社外の研究機関との共同研究も活発で、最先端の栄養科学に触れる機会も豊富です。
平均年収は約782万円と、食品業界では高水準の待遇が提供されています。
出典:有価証券報告書
森永乳業クリニコ(病態・介護食)
森永乳業の子会社であるクリニコは、病態・介護食に特化した専門企業として、管理栄養士の専門性が最も活かされる職場のひとつです。
嚥下食や流動食など、医療・介護現場で必要とされる製品の開発において、現場での経験をもつ管理栄養士の視点が重要視されています。
同社では、病院や介護施設での実務経験をもつ管理栄養士が、その現場感覚を商品開発に活かすことができます。
また、医療従事者向けのセミナーや研修会の講師として活動する機会も多く、専門性を社外に発信する役割も担っています。
年収は300万円から750万円程度と幅があり、経験や担当業務によって決定されます。
キユーピー(ベビーフード・調味料)
キユーピーでは、ベビーフードや調味料の開発において管理栄養士の知識が活用されています。
同社で働く管理栄養士は、大学で学んだ栄養学を実務に活かし、乳幼児の成長に必要な栄養バランスを考慮した商品開発に携わっています。
特にベビーフード分野では、月齢に応じた栄養ニーズの変化を理解し、安全で栄養価の高い商品設計をおこなうことが求められます。
また、子育て中の保護者向けの栄養相談や食育活動にも参加し、企業と消費者をつなぐ役割も担っています。
2024年の平均年収は約687万円となっており、安定した待遇が提供されています。
出典:有価証券報告書
日清オイリオ(高齢者・機能性食品)
日清オイリオでは、高齢者向けの機能性食品の開発において管理栄養士の専門知識が重要視されています。
同社では管理栄養士の声を積極的に製品開発に反映させており、現場調査や消費者ニーズの分析にも関与しています。
特に油脂を中心とした機能性成分の研究では、栄養学的な効果の評価や摂取方法の提案において、管理栄養士の専門性が発揮されています。
また、医療機関や介護施設への営業活動では、専門的な質問に対する技術的サポートを提供する重要な役割を担っています。2024年の平均年収は約801万円と、業界内でも高水準の待遇となっています。
出典:有価証券報告書
アサヒグループ食品(サプリ・食育支援)
アサヒグループ食品では、サプリメントの開発や食育支援活動において管理栄養士が活躍しています。
同社の就職活動に関する質疑応答でも「資格が有利」との回答があり、管理栄養士の専門性が高く評価されていることが分かります。
業務内容は、サプリメントの栄養設計から消費者向けの栄養相談、食育イベントでの講師活動まで多岐にわたります。
特に食材5色バランスチェックなどの消費者向けツールの開発にも関与し、栄養教育の普及に貢献しています。
平均年収は578万円から699万円程度とされており、安定した待遇が提供されています。
食品メーカーに就職するための管理栄養士以外のスキル

食品メーカーでは、管理栄養士の資格だけでは十分ではありません。
企業環境で活躍するためには、専門性を活かしつつ企業で働く力をどう補うかが重要なポイントになります。
- 業務改善やPDCAを意識した思考力
- 社内外との調整を円滑にするビジネスマナー
- Officeソフト操作・資料作成スキル
業務改善やPDCAを意識した思考力
食品メーカーで重宝される管理栄養士の特徴として、積極的な改善提案ができることが挙げられます。
企業では常に効率性とコスト削減が求められるため、業務プロセスの改善や新しいアプローチの提案ができる人材が高く評価されます。
また、売上や原価に関心をもつ姿勢も重要で、栄養学的な観点だけでなく、ビジネス的な視点も併せもつことが求められます。
社内外との調整を円滑にするビジネスマナー
企業で働く管理栄養士には、基本的なビジネスマナーの習得が不可欠です。
報告・連絡・相談の徹底、適切なメール作成、正しい敬語の使用など、社会人としての基本的なスキルが求められます。
特に食品メーカーでは、社内の多部門との連携や外部の取引先との調整が頻繁に発生するため、円滑なコミュニケーションが業務の成功を左右します。
Officeソフト操作・資料作成スキル
現代の企業活動では、Word・Excel・PowerPointを日常的に使用することが当たり前となっています。
栄養成分表の作成や分析データの処理、社内プレゼンテーション資料の作成において、見やすく説得力のある資料を作成する能力が必要です。
管理栄養士としてのスキルアップを図りたい方には、食育アドバイザー資格の取得もおすすめです。
食品メーカーでの食育活動や消費者向けの栄養情報発信において、より専門的な知識を証明できる資格として活用できるでしょう。
管理栄養士の就職先についてよくある質問
管理栄養士の就職先についてよくある質問をまとめました。
- 管理栄養士の資格があると食品メーカーの転職に有利ですか?
- 食品メーカーではどの職種に配属されることが多いですか?
- 食品メーカー以外で管理栄養士が活かせる転職先は?
- 管理栄養士の資格があると食品メーカーの転職に有利ですか?
-
管理栄養士の資格は、食品メーカーへの転職において確実に有利に働きます。
多くの企業で歓迎条件として明記されており、特に栄養関連の部署では資格保有者が優遇される傾向があります。具体的なメリットとして、まず顧客対応での信頼性向上が挙げられます。
医療機関や介護施設、学校給食などの専門性の高い顧客に対して、管理栄養士の資格をもつスタッフが対応することで、専門的な質問にも的確に答えることができ、契約獲得率の向上につながります。
また、商品開発では栄養学的な根拠に基づいた提案ができるため、より説得力のある企画書作成が可能になります。
さらに、食品表示や機能性表示食品の申請業務では、管理栄養士の専門知識が法的な要件を満たすために不可欠であり、企業のコンプライアンス体制強化にも貢献できます。
- 食品メーカーではどの職種に配属されることが多いですか?
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管理栄養士の場合、商品開発・品質管理・営業支援・学術部門などに配属されることが多く、それぞれの部署で管理栄養士の専門性が強く求められます。
商品開発部門では、特に機能性食品や高齢者食、ベビーフードなどの栄養設計が重要な商品の企画・開発を担当します。品質管理部門では、栄養成分表示の検証や食品表示法に基づく表示内容の確認、アレルゲン管理などの業務に従事します。
営業支援部門では、医療機関や介護施設への営業同行、専門的な商品説明資料の作成、顧客向けセミナーの講師などを担当します。学術部門では、臨床試験の企画・実施、学会発表用資料の作成、論文執筆サポートなどの研究関連業務をおこないます。
- 食品メーカー以外で管理栄養士が活かせる転職先は?
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食品メーカー以外でも、飲食業界全体でキャリアアップが可能です。
レストランチェーンのメニュー開発、食材卸業者での営業支援、飲食店コンサルティングなど、さまざまな選択肢があります。
レストランチェーンでは、本部でのメニュー開発や栄養価計算、食材の標準化業務などに携わることができます。特に健康志向のレストランや高齢者向け食事サービスでは、管理栄養士の専門知識が重宝されます。
食材卸業者では、飲食店向けの営業支援として、メニュー提案や原価計算のサポート、食材の栄養価情報提供などの業務があります。また、食品商社では、海外からの食材輸入時の栄養成分分析や表示作成業務も担当できます。
その他にも、健康食品通販会社での商品企画、料理教室での講師業務、食品関連メディアでのライター業務、行政機関での食育推進業務など、管理栄養士の資格と知識を活かせる職場は多岐にわたります。近年は、フィットネス業界や美容業界でも栄養指導のニーズが高まっており、新たなキャリアパスとして注目されています。
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まとめ
管理栄養士の就職先として食品メーカーは、従来の医療・福祉分野とは異なる魅力をもつ選択肢です。健康志向の高まりにより、栄養学の専門知識をもつ人材への需要は今後も拡大することが予想されます。
食品メーカーでの業務は幅広く、企業活動を通じて社会に貢献できるやりがいがあります。
また、大手企業では安定した待遇も期待でき、長期的なキャリア形成の場としても魅力的です。
成功するためには管理栄養士の資格だけでなく、ビジネススキルや企業文化への適応力も重要です。栄養価と商品性の両立や、消費者目線での情報発信など、新しい視点での専門性の活用が求められます。
適切な準備と明確な目標があれば、食品メーカーでの新しいキャリアは必ず充実したものになるでしょう。
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