「飲食業界の将来性は不安だ」という声を聞いたことはありませんか。
確かに長時間労働や低賃金、人手不足など、ネガティブに感じる側面があるのは事実です。
しかし一方で、最新のテクノロジー導入や健康・サステナブル志向への対応、そして回復基調にある外食市場など、他業界にはない魅力があるのもまた事実です。
この記事では、飲食業界の現状と課題を客観的に分析し、経営層にも働く人にも役立つ飲食業界の今後についての知識を共有します。
転職や就職を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
飲食業界の将来性が不安視される原因

飲食業界の将来性について不安を感じる背景には、いくつかの構造的な課題が存在します。
ここでは、特に懸念される4つのポイントを見ていきましょう。
- 長時間労働と休日取得の困難さ
- 賃金水準の低さと待遇格差
- 外食チェーンと個人店の格差拡大
- 業態転換が進みにくい業界特性
長時間労働と休日取得の困難さ
飲食業界では、従業員の年間総労働時間が他の産業と比較して非常に長く、休日の取得も難しいのが現状です。
厚生労働省が発表した「総実労働時間の推移」によると、飲食業の年間労働時間は他業種よりも多く、さらに週に60時間以上働く人の割合は全産業で3番目に高いことが示されています。
これは、店舗の営業時間や週末の集客ピークなど、業界特有の事情が大きく影響していると考えられます。
長時間労働は従業員の心身に負担をかけ、離職率の高さにもつながっています。

賃金水準の低さと待遇格差
飲食業界は、他の産業と比較して賃金水準が低い傾向にあります。「令和6年度賃金構造基本統計調査」によると、飲食業の平均賃金は301万円と、全産業のなかで最も低い水準です。
生活関連サービス・娯楽業の318万円や、その他サービス業の307万円をも下回る結果となっています。
この賃金水準の低さは、従業員の生活基盤を不安定にし、優秀な人材の確保や定着を困難にしています。

外食チェーンと個人店の格差拡大
近年、外食チェーンと個人店の間で経営状況に大きな格差が生じています。大手チェーンは、デジタル技術の導入や省人化を進めることで、コスト削減と業務効率化を実現しています。
一方で、個人店は人材の確保や価格競争で苦戦を強いられており、生き残るためには個性を打ち出した差別化による集客努力が不可欠です。個人の持つブランド力や集客力が問われる時代へと変化していることがわかるでしょう。
業態転換が進みにくい業界特性
飲食業界は、一度初期投資を行った厨房設備や店舗設計の影響で、柔軟な業態変更が難しいという特性があります。例えば、居酒屋として設計された店舗をカフェに転換しようとすると、大規模な改修が必要となるケースが少なくありません。
また、業態変更に伴う従業員の再教育や、これまでの固定客が離れてしまうリスクも懸念され、経営判断を難しくする要因となっています。
これらの要因から飲食店は1度始めて経営に困難さを感じても、業態変更ではなく『閉業』を余儀なくされることがあり、維持自体が難しくなっているのも問題です。
飲食業界の市場動向と客観的データ【2025年最新】
飲食業界はコロナ禍で一時的に厳しい状況に直面しましたが、現在は回復基調にあります。
ここでは、客観的なデータから現在の飲食業界の市場動向を見ていきましょう。
日本フードサービス協会が発表した外食産業市場動向調査によると、2025年3月度の売上は前年同月比7%増となり、40ヵ月連続の増加を記録しました。全体として外食需要は好調を維持し、客数は前年同月比2.5%増、客単価は4.4%増となっています。
コロナ禍の影響で落ち込んだ外食市場は、現在好調を取り戻しているのは事実です。しかし、顧客のニーズが変化したのもまた事実です。
ぐるなびの調査では、キャッシュレス決済ができる飲食店が人気で、全体の33.4%以上がキャッシュレス決済対応の飲食店をよく利用すると回答しています。その他、会計時にポイントが貯まることや、待たずに入れることなどが上位に挙げられています。
また、ぐるなびが調査した2025年に利用が増えそうな飲食店の特徴としては、以下のような点が挙げられます。
- お得感がある接客やサービスが良い
- クーポンや無料券がある
- その店だけにしかないメニューや味がある
- 値引きキャンペーンがある
- 安心安全な食材を使用している
- 口コミが良い
物価高騰などの影響で外食を控える消費者が増える傾向にあり、今後は伸びるお店とそうでないお店の二極化が進む可能性があります。
飲食業界の将来性への不安は思い込みかも

飲食業界に対する将来性の不安は、必ずしも現状を正確に反映しているとは限りません。
かつての「ブラック」なイメージは、業界全体の取り組みによって変わりつつあります。
- 「やめとけ」と言われるブラックなイメージは変わりつつある
- 人手不足と離職率の高さに取り組む企業が増えている
- 外食市場の回復と消費者ニーズの変化
「やめとけ」と言われるブラックなイメージは変わりつつある
飲食業界は、長時間労働、低賃金、人手不足といった三重苦から、「やめとけ」といったネガティブなイメージが先行しているのは事実です。
SNSや匿名掲示板では現場のリアルな声が拡散されやすく、こうした意見が目立つことで、安易な就職や転職には慎重な判断が必要だという認識が広まっています。
しかし、働き方改革が進むなかで、週休2日制や土日休みを取り入れる企業が増えているのも事実です。
例えば、京都発祥のフードチェーンである「株式会社THAN」は、週休2日、8時間労働など、従業員が働きやすい環境を整備することに非常に力を入れています。このような企業努力によって、業界全体のイメージは少しずつ変化しつつあります。
人手不足と離職率の高さに取り組む企業が増えている
飲食業界では慢性的な人手不足が続き、現場の負担が大きくなることで離職を招く悪循環が問題視されてきました。特に若手の定着率が低く、せっかく育成してもすぐに辞めてしまうことが多くの経営課題となっています。
しかし、この離職率の高さに対し、多くの企業が労働環境の改善や賃上げを実施し、対策に取り組んでいます。
ゼンショー、すかいらーく、王将、松屋といった大手企業は2025年に10%の賃上げを実施するなど、従業員の待遇改善に力を入れています。
さらに、配膳ロボットの導入など、人がいなくても店舗運営が可能な仕組み作りも進められており、人手不足の課題克服に向けた取り組みが加速しています。
外食市場の回復と消費者ニーズの変化
コロナ禍の影響で一時的に落ち込んだ外食市場は、現在回復傾向にあります。これは単なる需要の回復だけでなく、消費者ニーズの変化に対応できた店舗が生き残っていることも大きく関係しています。
健康志向の高まり、一人客への対応、テイクアウトやデリバリーサービスの拡大など、消費者の多様なニーズに応える店が市場を牽引しています。
富士経済グループの調査によると、コト消費に伴う飲食施設やテイクアウト、ホームデリバリーの市場が拡大していることが示されており、変化する消費者ニーズを捉えた店舗が成功を収めています。
飲食業界に将来性があるといえる根拠とは

飲食業界には、課題解決に向けた具体的な動きが見られます。
これらの変化は、業界の将来性を示す重要な根拠となるでしょう。
- フードテックやデジタル変革の導入が加速している
- 健康・サステナブル志向の高まりが追い風に
- 海外展開・インバウンド需要の再拡大
フードテックやデジタル変革の導入が加速している
飲食業界では、フードテックやデジタル変革(DX)の導入が急速に進んでいます。
セルフオーダーシステム、無人決済端末、ロボットによる配膳などが広がりを見せており、人手不足のなかでも安定した営業を継続できる体制づくりが注目されています。
例えば、すかいらーくグループでは配膳ロボットの導入を進め、くら寿司でも無人レジが導入されています。これらの技術導入は、従業員の負担を軽減し、顧客体験を向上させるだけでなく、人件費の削減にも繋がり、経営の効率化に貢献しています。
健康・サステナブル志向の高まりが追い風に
健康志向やサステナビリティ(持続可能性)への意識の高まりは、飲食業界にとって新たな追い風となっています。
低糖質メニューやヴィーガン対応、さらに環境に配慮したSDGsへの取り組みが評価される時代になりました。
消費者の価値観が美味しさだけでなく、健康や環境への配慮へと変化したことで、これらのニーズに対応できる飲食店は優位に立つことができます。
例えば、最近流行りのサラダボウル専門店「WithGreen」などは、糖質制限やヘルシー志向の人々に強く支持される業態として成功を収めています。
海外展開・インバウンド需要の再拡大
海外展開やインバウンド(訪日外国人観光客)需要の再拡大も、飲食業界の将来性を支える重要な要素です。海外店舗の開設、外国人向けメニューの提供、英語対応スタッフの育成などが本格化しています。
特に観光地や都市部では、訪日外国人の増加が直接売上に結びついています。
観光庁のインバウンド消費動向調査によると、訪日客の費用別支出のうち21.5〜22・5%を占めるのが飲食費であり、この需要の大きさがうかがえます。日本の食文化は世界的に人気が高く、今後も海外からの集客が期待されます。
飲食業界が直面する構造的課題への対策
飲食業界が抱える課題に対し、企業はどのように対応しているのでしょうか。
具体的な取り組みとその効果を見ていきましょう。
- 原材料費高騰への企業対応
- 人手不足解決の具体的取り組み
原材料費高騰への企業対応
飲食業界が直面する大きな課題の一つが、原材料費の高騰です。
企業はこれに対し、仕入れ先の見直し、契約栽培の導入による安定供給の確保、そして食材のロスを減らすための在庫管理の徹底など、多角的な対策を講じています。
また、メニュー構成の見直しや、一部の価格転嫁によって収益性を維持する努力も行われています。単価を上げるだけでなく、付加価値の高いメニューを提供することで、顧客満足度を損なわずに収益を確保する工夫も重要です。
人手不足解決の具体的取り組み
慢性的な人手不足は、飲食業界の継続的な課題です。この解決に向けて、企業は多様な取り組みを進めています。まず、労働環境の改善が挙げられます。
週休2日制の導入、休憩時間の確保、労働時間の短縮などにより、従業員が働きやすい環境を整備し、定着率の向上を目指しています。
次に、賃上げによる待遇改善です。先ほど紹介した松屋、ゼンショーなどの大手チェーンを中心に賃上げが実施され、従業員のモチベーション向上と人材確保につながっています。
さらに、デジタル技術の導入も進んでいます。配膳ロボットやセルフオーダーシステム、無人決済の導入により、省人化を実現し、少ない人員でも効率的な店舗運営を可能にしています。これにより、従業員はより価値の高い業務に集中できるようになります。
飲食企業の将来に向けた取り組みと成功事例

ここでは、実際に飲食企業がどのように課題を乗り越え、成長を続けているのか、具体的な事例を交えて紹介します。
- スシローのデジタル変革による回転率向上
- ワタミのサステナブル経営戦略
- 串カツ田中の子育て支援と女性活躍
スシローのデジタル変革による回転率向上
大手回転寿司チェーンのスシローは、DX(デジタルトランスフォーメーション)を積極的に導入し、業務効率化と顧客満足度向上を両立させています。
たとえば、セルフ会計システムや配膳ロボットの導入により、従業員の負担を軽減し、顧客の待ち時間短縮にも成功しました。
これにより、店舗の回転率が向上し、売上増に繋がっています。
テクノロジーを駆使した効率的な運営は、飲食業界の新たなビジネスモデルとして注目されています。
ワタミのサステナブル経営戦略
ワタミは、持続可能性を重視したサステナブル経営戦略を推進しています。
再生可能エネルギーの導入や、自社農場による地産地消の推進など、環境に配慮した取り組みを積極的に行っています。
これらの取り組みは、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資家からの評価も高く、中長期的な視点での経営が評価されています。
環境意識の高い消費者からの支持も得られ、企業のブランド価値向上にも貢献しています。
串カツ田中の子育て支援と女性活躍
串カツ田中は、従業員の子育て支援と女性の活躍推進に力を入れています。
ママ社員制度、時短勤務制度など、柔軟な働き方を実現できる環境を整備しています。
これにより、女性従業員がキャリアを継続しやすくなり、結果として離職率の低下と売上向上に寄与しています。
従業員が働きやすい環境を整えることは、人材の定着だけでなく、生産性向上にも繋がる好事例です。

飲食業界で将来性が期待できる職種とは

人手不足やデジタル変革が進む中でも、将来性のある職種には共通点があります。
それは代替されにくい専門性や拡張可能なスキルを持っていることです。
以下では、特に今後も需要が高まると見られる職種を紹介します。
- 店舗開発・立地戦略担当
- フードテック関連職
- 商品開発・メニュー開発職
- 海外出店プロジェクト担当
店舗開発・立地戦略担当
チェーン店の出店戦略を担当する職種は、今後も安定した需要が見込まれます。地理情報システムや購買データを駆使した分析力、そして不動産や商業施設との折衝スキルが重要な要素となります。
論理的な判断に基づく立地選定は、店舗の成功を左右する重要な業務です。経験を積めば年収600万円から900万円程度の収入も期待でき、キャリアアップの道筋も明確な職種といえるでしょう。
フードテック関連職
デジタル技術を活用したシステムの導入支援や企画運営を担当する職種は、業界のデジタル化とともに注目度が高まっています。セルフオーダーシステムや配膳ロボット、セントラルキッチンの効率化など、幅広い分野での専門知識が求められます。
ITスキルと飲食業界の知識を併せ持つ人材は希少価値が高く、現場の課題を理解したうえでシステム導入を進められる人材には大きな期待が寄せられています。
商品開発・メニュー開発職
原価管理と調理効率、そして顧客ニーズを総合的に判断した新商品の企画開発は、飲食企業の競争力を決定づける核となる業務です。
この分野での実績は食品メーカーや大手外食チェーンでも高く評価され、幅広いキャリアパスを描くことができます。特にヒット商品の開発経験は、転職市場においても強力なアピール材料となるでしょう。
海外出店プロジェクト担当
グローバル展開を目指す企業の増加に伴い、海外での店舗運営や現地法人設立に携わる人材への需要が拡大しています。
語学力を持つ飲食業界経験者は特に重宝され、海外勤務手当なども含めて高い収入を得られる可能性があります。日本の食文化を海外に広める役割も担うため、やりがいの大きい職種といえるでしょう。
飲食業界の今後が不安なら転職も検討しよう

飲食業界で培った経験やスキルは、他の分野でも十分に活かすことができます。
自身のキャリアを広げるための選択肢として、転職も検討してみましょう。
- 飲食業界のスキルは他業種でも活かせる
- 飲食業界の別業種への転職も選択肢になる
飲食業界のスキルは他業種でも活かせる
飲食業界で培ったスキルは、他の業種でも十分に活かすことができます。
例えば、顧客とのコミュニケーションを通じて培われる接客力や、突発的な問題に対応する対応力、そして現場で迅速に判断を下す現場判断力などは、営業職、販売職、顧客対応(CS)職などで高く評価されます。
飲食業界で働く人はよく「この仕事には将来性がない」と言いますが、それは誤りです。異業種であっても活かせるスキルは身についているので、スキルの棚卸しをして転職を検討してみましょう。
飲食業界の別業種への転職も選択肢になる
飲食業界内での転職だけでなく、全く異なる業種への転職も有力な選択肢となります。
その際、特に重視されるのは、マネジメント経験、複数店舗の統括経験、そして数値管理経験です。
これらの経験は、飲食業での昇格を通じて得られることが多く、異業種においてもキャリアの基礎として見なされます。例えば、店舗の売上管理や従業員の育成といった経験は、一般企業の営業マネージャーやプロジェクトリーダーなどの職種で活かせるでしょう。

飲食業界の将来性についてよくある質問
飲食業界の将来性について、よくある質問とその回答をまとめました。
不安な点を解消し、今後のキャリアプランを考える参考にしてください。
- 飲食業界は今後も続いていくと思いますか?
- 飲食業界はやめとけといわれる理由はなんですか?
- 飲食業界から異業種への転職は難しいですか?
- 飲食業界は今後も続いていくと思いますか?
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飲食業界は継続していくと考えられます。食事は人間の基本的な欲求であり、この需要がなくなることはありません。
ただし、デジタル化や健康志向の高まりに合わせて、提供方法や価値観は変化するでしょう。
顧客体験の向上や新しいニーズへの対応ができる企業が成長していく業界なので、その点に着目して転職先を選ぶのがおすすめです。
- 飲食業界はやめとけといわれる理由はなんですか?
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主な理由は労働時間の長さ、給与水準の課題、人材不足による負担です。体力的・精神的な負荷が大きく、離職率が高いことから「ブラック」なイメージが定着しています。
しかし、働き方改革や待遇改善に取り組む企業も増えており、業界全体の環境は徐々に改善されつつあります。転職先を探す場合は、労働時間の改善への取り組みや待遇をよく検討したうえで、あなたにあった職場を探しましょう。
- 飲食業界から異業種への転職は難しいですか?
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適切な戦略があれば転職は可能です。接客力や問題解決能力、マネジメントスキルは他業種でも評価されます。
重要なのは、具体的な経験をもとに自分の能力をアピールすることです。「クレーム対応の経験」や「スタッフ育成の実績」など、具体例を示すことで転職成功の可能性が高まります。
まとめ
飲食業界は、長時間労働や低賃金、人手不足といった課題に直面しているのは事実です。しかし、デジタル変革やサステナビリティへの対応、海外展開やインバウンド需要の再拡大といった新しい価値観に適応できる企業には、大きな成長の余地があります。
個人としては、これらの構造的な課題に向き合いながら、自身のキャリア形成を戦略的に考えることが重要です。また、経営層としては顧客が「どんな飲食店を求めているのか」を考えながら、それに適応するサービスを考案、実施していく姿勢が必要でしょう。
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