飲食業界は、日本の労働市場において重要な位置を占めていますが、依然として労働環境の改善が遅れている分野でもあります。
特に近年、働き方改革が叫ばれる中でも、飲食店でのブラック企業問題は後を絶ちません。
長時間労働や休日の少なさ、残業代未払いなど、労働基準法に違反するような事例も多く報告されています。
また、人手不足による過重労働や、カスタマーハラスメントなどの新たな問題も浮上してきており、働く人々の心身の健康が脅かされています。
このような状況は、特に若い世代の飲食業界離れを加速させ、さらなる人手不足を引き起こすという悪循環を生んでいます。
この記事では、飲食店のブラック企業の実態と、その対処法について詳しく解説していきます。
飲食店がブラックと言われる理由

「飲食店はブラックが多い」と言われる背景には、いくつもの業界構造的な課題があります。
とくに給与や労働時間の問題に加えて、責任の重さ、人間関係、キャリアの不透明さなど、働き手に過度な負担が集中しやすい環境が整ってしまっていることが要因です。
まずは、ブラックな飲食店にありがちな特徴を整理してみましょう。
- 給与水準が低い
- 長時間労働と肉体的負担
- 人手不足による過重労働
- 飲食店特有のハラスメント
責任の重さ給与水準が低い
飲食店の多くは、最低賃金に近い時給設定や低水準の月給が一般的です。
さらに、深夜手当が未払いのまま深夜帯に働かされるケースもあり、労働に見合った収入が得られないという声が多く聞かれます。
加えて、休憩時間が実質的に取れないにもかかわらず、給与には反映されないなど、法令違反すれすれの給与体系となっている店舗も珍しくありません。
こうした実情が、「飲食=ブラック」というイメージを強める一因となっています。
長時間労働と肉体的負担
飲食店では、開店準備から営業、片付けまで一連の業務が長時間にわたることが多く、拘束時間が10時間を超えることもあります。
特に調理場では、高温・湿度・油汚れ・立ちっぱなしの作業といった肉体的に厳しい環境が当たり前です。
さらに、仕込みや清掃が営業時間外に行われることも多く、勤務時間が伸びがちです。
こうした労働環境により、慢性的な疲労や腰痛、関節痛といった職業病に悩まされる人も少なくありません。

人手不足による過重労働
飲食業界は慢性的な人手不足に悩まされており、限られたスタッフで営業を回すのが常態化しています。
その結果、本来複数人で対応すべき業務を、1人でこなすよう求められる場面が増え、現場の負担が大きくなっています。
新人教育に割く時間もなく、未経験者を即戦力として扱わざるを得ないケースも多く、スタッフ同士の連携ミスやトラブルがストレス要因となることもあります。

飲食店特有のハラスメント
飲食店では対面での接客が基本であるため、理不尽なクレームやカスタマーハラスメント(カスハラ)のリスクが常につきまといます。
「注文ミス」「料理が遅い」「好みと違う」といった些細な理由で叱責される場面も少なくありません。
また、「食べ残しが出たから返金しろ」などの悪質な要求に対して、対応を迫られるケースも。
こうした精神的なストレスは蓄積しやすく、心身の不調につながることもあります。


責任の重さ
飲食業ではたとえ正社員でなくても、重大な責任を担わされることが多いのが特徴です。
食材の管理や在庫の発注、調理工程の衛生管理など、一つのミスがクレームや食中毒に直結するリスクがあります。
さらに、売上や来客数の増減に一喜一憂する日々の中で、店長や責任者クラスには目標達成のプレッシャーも大きくのしかかります。全社会議で業績について説明を求められ、内容によっては叱責されることもあるでしょう。
こうしたプレッシャーの連続が、精神的な疲弊を生む原因となっているのです。

データで見る飲食店の労働環境
次は、飲食店が本当にブラックなのかどうかをデータで確認していきましょう。
平成末期と令和の時代で飲食店の労働環境がどう変化したのかを解説します。
- 平成末期の飲食店の状況
- 令和5年の飲食店の状況
平成末期の飲食店の状況
かつて飲食業界は「ブラックな職場」の代名詞とまで言われるほど、厳しい労働環境が問題視されてきました。
平成29年の調査では、以下のような実態が明らかになっています。
まず、離職率は全産業平均が15%だったのに対し、飲食業は26.8%と突出して高い数字を記録。
さらに、所定外労働時間(いわゆる残業)は月平均26時間と、他業種よりも長い傾向がありました。
特に中小規模の個人経営店では、40時間を超える事業所が約3割を占め、長時間労働が常態化していたことがわかります。
また、年次有給休暇の取得日数は平均4.4日/年と、法定日数を大きく下回る結果となっており、長時間労働・有休未取得・割増賃金の未払いといった「三重苦」の構造が指摘されていました。
このような状況の背景には、慢性的な人手不足と法制度に対する理解不足があり、とくに小規模店舗では労働法の順守意識が低いという構造的な課題が浮き彫りとなっていました。
飲食業界の離職率の詳細なデータについては下記の記事で業態別・年代別に詳しく解説しています。

令和5年の飲食店の状況
近年では、働き方改革やDX化の流れを受けて、飲食業界にも改善の兆しが見え始めています。
厚生労働省の「雇用動向調査」によると、令和5年における宿泊業・飲食サービス業の離職率は19.8%と、平成29年の26.8%から約7ポイントの改善が見られました。
依然として他産業に比べれば高い水準ではありますが、24時間営業の見直しや労務管理の徹底、配膳ロボットの導入といった取り組みによって、現場の働きやすさが徐々に整備されてきたことが、この数字に表れていると考えられます。
大手飲食店チェーンを中心とした働き方改革について
以下のように、大手企業を中心にさまざまな改革事例が進められています。
- ロイヤルホストの営業時間短縮と連休取得推進
- 佰食屋による「100食限定」の逆転発想
- 株式会社アワーズの配膳ロボット導入
ロイヤルホストの営業時間短縮と連休取得推進
ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」を運営するロイヤルホールディングスでは、2017年から24時間営業を全面廃止し、店舗ごとに定休日を設ける取り組みを始めました。
背景には、深夜・早朝に働ける人材の確保が難しくなっていたことや、従業員の長時間労働に対する懸念がありました。
そこで、収益よりも「従業員満足度」と「持続可能な経営」を優先し、思い切った判断に踏み切ったのです。
さらに、社員には年に1回、7連休を取得する制度を導入。
プライベートの充実によって心身のリフレッシュを促し、職場の定着率向上にもつなげています。
これらの改革により、営業日が減っても客単価の上昇やサービスの質の向上により増収を達成するなど、従業員と顧客の双方の満足度を高める好循環が生まれています。
佰食屋による「100食限定」の逆転発想
京都発のステーキ丼専門店「佰食屋(ひゃくしょくや)」では、開店当初から「1日100食まで販売する」というルールを徹底しています。
この取り組みは、売り上げの最大化よりも従業員の生活の安定を優先したもので、食品ロスの削減・仕込み時間の短縮・残業ゼロという成果を生み出しました。
スタッフは決まった時間に働き、定時に帰宅できるため、家族との時間や趣味に使える時間が増え、満足度が大きく向上しています。
また、販売数を制限することで原価管理も徹底され、利益率を安定的に確保できる経営モデルとしても注目を集めています。
従来の「飲食=売れば売るほど良い」という常識を覆し、無理のない働き方で高収益を実現する革新的な取り組みとして、国内外から高く評価されています。
株式会社アワーズの配膳ロボット導入
複数のレストラン業態を展開する株式会社アワーズでは、最新の配膳ロボットを導入することで、業務効率の大幅な向上を実現しています。
人手不足が続く中で、「接客の質を落とさずに、スタッフの負担を減らすにはどうすべきか?」という課題に対し、テクノロジーによる解決を模索。
結果として、料理の提供時間を短縮できただけでなく、スタッフの移動量や立ち仕事の時間を軽減し、肉体的疲労を大きく削減できました。
さらに、浮いた時間を使ってより丁寧な接客や清掃、教育にあてることができ、顧客満足度の向上にも貢献しています。
省力化とサービス向上を同時に実現した好事例といえるでしょう。
このように大手を中心に働き方の改善は実施されているが、以前ブラックな飲食店があるのも事実です。飲食店への就職を目指すなら、ブラックな飲食店を見抜く方法を理解しておきましょう。
ブラックな飲食店を見抜く方法
就職や転職の際に、ブラックな飲食店を事前に見抜くことは非常に重要です。求人情報の確認から面接時の対応まで、さまざまな観点からチェックすべきポイントがあります。
以下の項目を参考に、慎重に企業選びをおこないましょう。
- いつも求人を出している
- 給与や雇用条件などが調べても出てこない
- インターネット上の口コミが悪い
- 面接時の対応が悪い
- 社員の顔が疲れている/笑顔がない
いつも求人を出している
同じ店舗で求人募集が継続的に出続けているケースは、要注意です。
従業員の定着率が低く、頻繁な離職が発生している可能性が高いことを示唆しています。
特に気をつけるべきは、募集内容が毎回同じような条件である場合です。
これは、労働環境の改善に向けた取り組みが行われていない証拠かもしれません。
また、急募や即日勤務開始可能といった表記が目立つ求人も、人材の使い捨てが疑われます。
さらに、求人サイトでの掲載期間が異常に長い、または頻繁に更新されている場合も、職場環境に問題がある可能性を示唆しています。
給与が不明確or低水準
企業の透明性の低さは、ブラック企業の典型的な特徴です。
給与体系や勤務条件が求人情報に明確に記載されていない場合は、注意が必要です。
特に、残業代の支給基準や休暇制度について具体的な記載がない求人は危険信号です。
また、基本給と各種手当の内訳が不明確な場合も、実際の収入が期待を下回る可能性があります。
さらに、社会保険の加入条件や福利厚生の詳細が明示されていない場合も、労働条件に問題がある可能性を示唆しています。
インターネット上の口コミが悪い
インターネット上の口コミサイトで、労働環境に関する具体的な不満が多く見られる企業は要注意です。
特に、複数の投稿で同じような問題点が指摘されている場合は、その内容を重視する必要があります。
注目すべきポイントは、残業時間や休暇取得の実態、職場の人間関係などに関する情報です。
また、退職理由や在職期間に関する記述からも、職場環境の実態を推測することができます。
ただし、口コミ情報の中には誇張や偏りがある可能性も考慮に入れ、総合的に判断することが重要です。
面接時の対応が悪い
面接は企業の体質を直接確認できる重要な機会です。
面接官の態度や説明内容から、その企業の本質を見抜くことができます。
特に注意すべきは、労働条件に関する質問への回答が曖昧な場合です。
残業時間や休暇取得の実態について具体的な説明がない、または質問を避けるような態度は危険信号です。
また、即日での採用判断を強要されたり、労働条件の確認を急かされたりする場合も、ブラック企業の可能性が高いと考えられます。
社員の顔が疲れている/笑顔がない
求人情報だけでは見えないのが、実際の職場の空気感やスタッフの表情です。
応募前に店舗を訪れてみると、現場の雰囲気を肌で感じ取ることができます。
もし、従業員の多くが疲れ切った表情をしていたり、笑顔がない状態が当たり前になっていたりする場合は要注意です。
人手不足や長時間労働によって、精神的・肉体的に余裕がない環境である可能性があります。
ブラックな飲食店に入社してしまったときの対処法
不幸にもブラックな飲食店に入社してしまった場合でも、適切な対処方法があります。
一人で抱え込まず、専門家のサポートを受けながら、状況の改善を目指しましょう。以下の選択肢を状況に応じて検討することをお勧めします。
- 労働基準監督署に相談する
- 転職エージェントのサポートを受ける
- 退職代行サービスを利用する
- 場合によっては弁護士に介入してもらう
労基に相談する
労働基準監督署は、労働者の権利を守るための公的機関として、労働条件に関するさまざまな相談に対応しています。
残業代の未払いや、違法な長時間労働、休憩時間の未取得、有給休暇の取得拒否など、労働基準法に違反する状況があれば、まずは相談することをお勧めします。
労働基準監督署への相談は無料で、相談者の秘密は厳守されます。
また、相談したことを理由に会社から不利益な扱いを受けることは法律で禁止されています。
必要に応じて、労働基準監督官による職場への立ち入り調査も実施されます。
最近では、オンラインでの相談窓口も充実してきており、まずは匿名で相談することも可能です。
状況が深刻な場合は、給与明細や労働時間を記録した資料などを準備して、直接窓口に相談することをお勧めします。
転職エージェントのサポートを受ける
現在の職場環境に問題を感じた場合、転職エージェントに相談することで、新たな就職先を見つけるサポートを受けることができます。
飲食業界に精通したエージェントは、ブラック企業を見分けるポイントを熟知しており、より良い労働環境の企業を紹介してくれます。
また、求職者の経験やスキル、希望する労働条件を踏まえて、最適な求人を提案してくれます。
履歴書や職務経歴書の作成支援、面接対策なども無料で受けられることが一般的です。

さらに、現在の職場での経験を活かして、他業種への転職を検討することも可能です。
エージェントは、飲食業界で培った接客スキルや管理能力を評価してくれる企業を見つけるサポートもしてくれます。
また、飲食店の正社員として本当に楽しく働ける職場の特徴を理解することで、同業界内でより良い環境への転職も検討できます。

退職代行サービスを利用する
退職の意思を直接伝えることが困難な状況では、退職代行サービスの利用も選択肢の一つです。
これらのサービスは、従業員に代わって会社との交渉や退職手続きをおこなってくれます。
退職代行サービスは、依頼者の意向を踏まえながら、法的に適切な方法で退職手続きを進めます。
特に、パワーハラスメントなどの問題がある職場では、直接の対話を避けられることで精神的な負担を軽減できます。
ただし、退職代行サービスの利用には費用が発生します。
また、サービスの質や信頼性は会社によって異なるため、実績や評判を十分に確認してから選択することが重要です。
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場合によっては弁護士に介入してもらう
深刻な労働問題が発生している場合は、弁護士への相談を検討する必要があります。
特に、未払い賃金が多額に上る場合や、ハラスメントによる精神的被害が大きい場合は、法的な対応が有効です。
弁護士は、労働問題に関する専門的な知識と経験を持っており、適切な解決策を提案してくれます。
また、会社との交渉を代行してくれることで、問題をより円滑に解決できる可能性が高まります。
初回相談は無料で実施している法律事務所も多く、費用対効果を考慮しながら対応を検討することができます。
必要に応じて労働審判や訴訟などの法的手段を取ることも可能です。
まとめ
飲食店のブラック企業問題は、業界全体で取り組むべき重要な課題です。労働環境の改善なくしては、人材確保や業界の持続的な発展は望めません。
就職や転職を考える際は、求人情報の精査や口コミのチェックなど、慎重な企業選びが重要です。また、すでにブラックな環境で働いている場合は、一人で抱え込まず、専門家のサポートを積極的に活用することをお勧めします。
これからの飲食業界が、働きやすい環境を整備し、従業員が安心して長く働ける業界となることを願っています。そのためにも、私たち一人一人が労働問題に対する意識を高め、適切な対処方法を知っておくことが大切です。
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